食いしばりとは、比較的音がしにくい歯ぎしり(クレンチング)のことですが上下の歯を力いっぱいかみ合わせることで顎や歯への負担が強いと言われています。
食いしばりや歯ぎしりが習慣的になると顎関節に慢性的に負担がかかることで口が開きにくくなる症状が引き起こされてしまいます。
中には歯の擦り減り、知覚過敏や顎関節周囲の神経を圧迫し顎関節に痛みが生じてしまうケースも珍しくはありません。
また症状は顎だけでなく、首筋から肩にかけての筋肉の張りや偏頭痛などの症状を伴う場合もみられます。
今回はおよそ10分で行える食いしばりのボトックス治療の効果やメリットなど分かりやすく説明していきますね。
食いしばりを放っておくとどうなるの?
食いしばりなどは、誰にでも起こりうる症状ですが特に睡眠中やストレスを感じているときに生じやすく、頻度や持続時間が長いと二次的の症状に繋がる危険性があります。
具体的には「顎関節症」、「外骨腫」、「歯が擦り減る」などの症状を始め、睡眠時無呼吸症候群にもなりやすいという報告もあります。
また、食いしばりが習慣化されることで首から肩にかけての筋肉がこわばり、肩こりや寝起きの不快感、片頭痛などを自覚症状として感じる方もいるようです。
睡眠時やストレスにより生じるため、意識的にコントロールできないという点も慢性的に症状が進行しやすい理由の一つです。
さらに怖いのが食いしばりを放置しておくことで、歯が削れてしまい高齢となった時にあなたの歯が削れて保てなくなってしまう可能性が高くなります。
食いしばった筋肉を柔らかくするボトックス治療
ボトックス治療とは固く動きにくくなった筋肉へ直接ボツリヌス菌を注射することで一時的に筋肉を柔らかくすることや動かしやすくすることを目的とした治療法です。
美容整形外科では筋肉の発達したえらハリ、ほうれい線、しわの改善などの目的で施行されているのが有名ですね。
また、リハビリの分野でも注目されており、脳梗塞など麻痺して動かしにくくなった筋肉に注射し、動かしやすくするなどの治療の取り組みも増えてきています。
このボトックス治療ですが、強くかみしめる歯ぎしりや食いしばりなどの治療にも有効です。
実際に日本補綴歯科学会、日本顎関節学会などの歯科学会でも発表されており、顎関節症の症状を緩和することや就寝中の歯ぎしりの緩和などの効果があると言われているようです。
食いしばりや顎関節症に対するボトックス治療はボツリヌス菌を用いて、度重なる食いしばりにより過緊張となった咬筋を中心とした顎周りの筋肉を調整し、和らげることが目的として施行されます。
顎周りの筋肉の緊張が和らぐことで、食いしばりにより引き起こされる咬筋の肥大や顎関節への負担を軽減することが可能です。
ボトックス治療ならではのメリット
ボトックス治療のメリットはなんといっても治療時間が短く、早期から効果を実感しやすい点です。
治療にかかる時間は問診を含めて10~15分くらいで施術が終わり、治療後より通常の生活を送ることもできます。
効果に関しては、個人差はあるものの1週間程度で顎が軽くなった、口が開きやすくなったなどの意見が多くみられます。
効果の持続期間は1回の治療でおよそ3~6ヶ月の間とされているので、症状が強い場合には定期的に治療に通う必要があります。
気になる治療の副作用ですが、ボツリヌス菌を精製したものを使用するため、中毒などになる心配はありません。またアレルギーテストなどもすることなく施術を受けることができます。
まれに皮下出血が起こるケースや注射の針の後が残るなどもあるようですが、お化粧で隠すこともでき一過性で落ち着く場合がほとんどです。
また、治療の際には麻酔を使用するため痛みを抑えての治療が可能です。
ボトックス治療で小顔にも?
食いしばりの治療で咬筋などの筋肉を弛緩させると説明しましたが、実はこの顎周囲の筋肉を和らげることで筋肉量が減り小顔になりやすい傾向があるようです。
またえらハリや顎のしわが軽減したケースも報告されています。
注意点としては歯科医では美容のためのボトックス治療は行えないので、あくまでも副次的な効果として小顔効果やえらハリの軽減などが報告されていることを知っておきましょう。
他の食いしばりの治療にはどんなものがあるの?
従来の食いしばりの方法としてはマウスピースやナイトガードなどが治療方法として紹介されています。
具体的には就寝時にマウスピースを装着し、食いしばりや歯ぎしりから歯と歯の接触を防ぐことで歯の摩耗を防ぐことや顎への負荷の軽減をすることができます。
マウスピースは、ものにもよりますが作成費用は保険が適用されるため5,000円程度で制作でき、装着までには2回の通院が必要です。
Amazonなどでも既製品のマウスピースは販売されているようですね。
マウスピースは歯の保護にはとても有効ですが、デメリットとしては装着時の違和感があることでしょうか。
慣れるまで時間がかかることもある点がボトックス治療と違うところです。
他にもセルフケアとして首筋や首周囲の筋肉、咬筋のストレッチやマッサージが効果的とも紹介されています。咬筋の過緊張が顎関節症にも影響を与えるため、セルフケアで筋緊張を和らげることは大事なポイントですね。
ボトックス治療と併用することで症状の再発、増悪予防に
食いしばりによる症状に対してボトックス治療とマウスピースやストレッチを併用することで症状の再発や増悪を予防することに繋がります。
定期的にボトックス注射を行われている場合でも、セルフケアはとても重要でストレッチで和らげることやマウスピースなどで歯を保護することも心掛けてください。
なかには併用することでボトックスの治療回数が減ったなどの意見もあります。
やはり意識的に歯を大切にすることが、食いしばりの悩ましい症状の緩和への近道ではないでしょうか。
気になる保険適用や費用は
先程紹介したマウスピースの作成には保険が適用されています。
一方で現在のところボトックスによる食いしばりの治療には保険は適用されていません。
そのため歯科医院で実施される食いしばり、歯ぎしりに対するボトックス治療に関しては自由診療で行われている状況です。
ちなみに気になる食いしばりにボトックス注射を行う場合の費用の相場ですが、1回あたり3~5万円で実施されることが多いです。
効果は3~6ヶ月間持続すると言われていますが、年間での治療費は多い場合には20万円程かかってしまうこともあるかもしれません。
まとめ
ボトックス治療は食いしばりによって緊張が高まった咬筋など顎周りの筋肉に注射をして筋肉の緊張を和らげ、顎関節への負担や歯ぎしりの症状を緩和させることができます。
従来のマウスピース治療などと比べて日常生活にストレスも感じることなく、短時間での治療が行える点も魅力的ですね。
定期的に通院する必要もありますが、マウスピースやセルフケアと組みあわせて治療していくことが症状の再発や増悪を予防するポイントです。
この記事を読まれた方で、ボトックス治療に興味を持たれている、あるいは慢性的な顎関節症の症状で悩まれている方は、一度歯科医と相談しボトックス治療も検討してみてはいかがでしょうか?